【コロナの1年】2隻の船から学ぶ政治と文化

コロナ騒動が始まりもうすぐ1年。当初ここまで長期化するなんて思いもよらず、これを書いてる時点でもまだ終わりが見えない状態です。今年はずっとこんな状況下で過ごしてましたので、これまでで経験したことがないような閉塞感のある1年だったように思います。自分はベトナム住まいなので基本はベトナムと日本の状況を追っているわけですが、欧米諸国や東南アジアの国々の状況もやっぱり気になります。今回は各国のコロナ対策を目の当たりにしながら学んだことを2隻の船に例えてやや風刺的に書いてみます。少し抽象的な書き方をしますので分かりにくいかもしれませんが、それぞれが何を指しているかは読み手に委ねることとします。

船の安全を確保するにはどうするべきか

嵐に遭って100人乗っている船が沈みかけたときに、最初にその場で10人降ろせば安全に航行できると判断し、10人は運が悪かったということで海に投げ出すことに。でもって残りの90人は安全に航行することができたのがA船。

一方誰も降ろさないで何とか沈ませず航行を続けようと判断したが、不安定な航行の結果一人一人と海に落ちていき最終的に何人が海に落ちるか分からない状態なのがB船。厄介なのはB船はキャプテンの言うことを聞かない乗員が多いので指揮を執りにくい点、下手な指示を出すと自分が船から放り出されるかもしれないという恐怖から無難でどっちつかずな指示しか出せないキャプテンという点にあります。

どちらの船に乗るのが正しいのか?岸に着くまではその答えはまだ出せませんが、今の時点で被害状況はB船のほうが高く、乗員の不満も高まっているようです。

海に落ちても溺れ死ぬとは限らない

最初に運悪く海に投げ出されたA船の10人。しかし「海に落ちる=終わり」というわけではなさそうです。実力がある人は自力で泳いで何とか船についていっています。別の人で少し乗員に余裕がありそうな船を見つけてそっちに乗り込めた人もいました。それでも何人かは沈みそうになっています。安全に航行している乗員90人も自分たちの代わりに落ちた10人に対して同情的で、ある人は自分の持ち物を加工して浮き輪を作り、沈みそうな人に投げ入れました。またある人は今日食べる自分のご飯の一部を海に落ちた人に渡しています。船に残った90人が協力すれば海に落ちた人も含めて全員助かるんじゃないか?そういう希望が見えてきているようです。

一方B船は徐々に、また確実に海に落ちる人が増えていきます。乗員の中では「次は誰の番だ」と気が気でない様子で、もはや落ちた人に意識は行きません。「この状況を早く何とかしろ!」とキャプテンに詰め寄りますが、キャプテンもこれといった指示が出せません。ただ「乗員の皆さんの協力」を要請するばかりです。またある乗員はこれまでに落ちてしまった人たちをネタに責任問題としてキャプテン辞任を叫んでいます。今回とは全く別のときの航海を挙げてそのキャプテンの上げ足取りに必死です。その人はこの機に乗じてキャプテンの座を狙っているのかもしれません。船から落ちた人はキャプテンから何かしらの援助が出ることを待ち続けていますが、未だにその期待が持てない状況です。

意識の統一ができない船は迷走する

A船の乗員はキャプテンから言われた通りに行動しています。それが正しいかどうかの判断ができるわけではなく、ただ盲目的にその指示に従っているだけです。仮に何かキャプテンに意見を言ったとしても聞き入れられないことも分かっています。なのでとにかく自分たちができることを考えて助け合い行動する。それで何とかここまで行動してきましたが、一定の安定した航行に戻ったことにより、その危機を乗り越えたという団結心や自信、またキャプテンに対する信頼が強まったように見えます。

B船は依然として不安定な航行が続いており、乗員の不満もピークに達しています。そこでキャプテンは乗員の不満解消のためにある施策を考えます。それは海に落ちた人も含めて全員に無料で食料を配給するというサービスです。「これで暫くは大人しくしてくれるだろうし、キャプテンを信頼してくるんじゃないか。」こんな期待が見え隠れします。しかし乗員からは様々な声が聞かれます。

「本当に困っているのは海に落ちた人や今にも落ちそうな人。私の食料はそういった人たちへ回してください。」

「せっかくの食料を返上するなんてとんでもない。非常用として食べずに保管しておくんだ」

「自分の家族はまだまだ余裕があるけれど、子どもから年寄りまで同じ量の食料がもらえるとは。何だか得した気分だ」

どうやらキャプテンは食料が必要な人、不要な人、量の調整などを調べる時間的余裕もなかったようです。それぐらい切羽詰まっていたのかもしれません。しかしキャプテンが一番恐れているのは嵐によって船が沈むのではなく、乗員の暴動によって船が沈むことでした。その後もキャプテンは乗員をなだめるために様々な施策を打ち出しますが、根本的な事態の改善には全く繋がらず乗員の対応に悪戦苦闘し続けるのでした。

A船とB船のどちらに乗船すべきか

A船とB船のどちらに乗船するのが正解というものではありません。己のスタンス次第かと思います。全員が助かるという観点で行くと、A船はその気になれば全員が海に片足を突っ込んだ状態で航海を続けることができるので、指揮は取りやすいように思います。B船は誰も水がかかることなく全員助かることをキャプテンに求めるので指揮は取りにくいでしょう。本音では自分が濡れなければ後はどうでもいいと思っている乗員もいると思いますが、この非常時でそういった本音も所々で漏れてきます。

一方A船の怖いところはキャプテンからの指示一辺倒で航海しますので、もし間違った判断をすれば船ごと沈んでしまうということです。場合によってはキャプテンの判断ミスということを知らずに沈んでいく乗員もたくさんいるかもしれません。

嵐を乗り終えて岸に着くころにはA船とB船の乗員はそれぞれどうなっているのでしょうか。また来年も航行の続きがありそうです。