ベトナムの未婚男女宿泊問題を法的に解説

「ベトナムで婚姻関係のない男女がホテルに宿泊するのは違法だと聞いたことがあるが、実際のところは?」

根強く聞かれる質問です。巷のネットで語られたりしてそういうのを見て不安になる方もいらっしゃるようですが、最初に結論を言うと「かつては違法だった」ということになります。今回はこの点において法改正などの経緯を踏まえてお話します。

宿泊施設のセキュリティに関する規定

ベトナムで2010年に出された通達33/2010/TT-BCA第6条には宿泊施設のセキュリティに関して大きく以下のような規定が定められています。

ー宿泊施設のルールを目立つ場所に掲示すること

ー宿泊客の個人情報を記録し、当日の23:00前に管轄の公安へ届け出ること

ー23:00以降に利用する宿泊客の情報は翌朝8:00までに管轄の公安へ届け出ること

ー宿泊客は公的な身分証明書を提示しなければならない

ー身分証明書を所持していない者を宿泊させる場合はその旨を管轄の公安に届け出なければならない

ーゲスト客も同様に身分証明を提示しなければならない

ー宿泊施設を違法行為に使用(売春、賭博、薬物使用など)することは厳禁

またこの法律の前身にあたる2001年に出された通達02/2001/TT-BCAには以下の項目がありました。

ー家族夫婦を除き、男女は別室でなければならない

この通達は上の2010年の通達にさし変わっており、現在男女別室を規定する項目は消えています。したがって婚姻証明のない男女であっても宿泊は可能ということになります。現に私も妻とホテル宿泊する際に婚姻証明書の提示を求められたことは未だありません。

はい、で何でこんな法律がかつてあったのかという話なんですが、以下のようなためと個人的に思っています。

・当時は経済的な問題もあり未婚の男女で旅行、外泊するということがほとんどなかった。

・そもそも婚前交渉がよろしくないとされていた時代。

・夫婦以外の同室宿泊は不倫または売春が多かった。

しかし経済発展や社会の認識の変化などに伴い未婚の男女の同室禁止は時代にそぐわなくなったと考えられ、法律改正で削除されたと考えられます。今もこの名残の影響で頭を悩ましているのは一部の日本人(外国人?)のみで、当のベトナム人の若者はそんな法律があったということを知らない人が大半です。この法律が今も生きていたら昨今のラブホテル(nhà nghỉ)など成り立ちませんからね。

ホテル側は余計なリスクを取りたくない

このように未婚の男女であっても宿泊は可能ということになりますが、明らかに売春が疑われるような客に対してはホテル側も宿泊させたくないというのが本音です。同室の男女で売春や薬物使用などの違法行為があった場合、政令167/2013/NĐ-CP第25条の1項により宿泊施設は以下の罰則が科されます。

1500~2000万VNDの罰金、6か月~12か月の営業停止

もう7年前ぐらいの話ですが、ハノイにある東屋ホテルで「男女で宿泊する際には婚姻証明書の提示をお願いしています」という注意書きを見たことがあります。これは過去の法律が変わったことを知らないのではなく、場所柄余計なリスクのある客を宿泊させたくないという自衛なのかと。エリア的にも出張とかで羽目を外して嬢を連れ込もうとする日本人がいそうですし。

売春を疑われて公安に踏み込まれた場合は?

きちんとした恋愛関係であれば宿泊していても問題ないわけですが、運悪く売春を疑われて公安が部屋に乗り込んできた場合はどうなるのでしょうか。まず本当に売春行為に及んでいたのであれば大人しくお縄にかかるしかないでしょう。しかし本当の恋愛関係であった場合は自分たちが行きずりの関係でないことを証明できれば理解してもらえるという話もあります。

具体的には公安からパートナーの個人情報を聞かれて即答できるかというのが一つの基準になるのだとか。確かに行きずりの関係でそれらの個人情報を把握しているかと言われると怪しいところです。これについては法的根拠はなく、あくまでベトナム人一般の中で緩く認識されているようなことですのであくまで参考程度に理解してください。

因みに今回の記事はあくまでホテルに関しての話です。アパートなどの住居についてはまた具合が変わってきますので、それについてはまた別記事で紹介しようと思います。

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