ベトナム人が仕事に求めるもの

日本人がベトナム人を雇用する際、ベトナム人の仕事に対する感覚についてしばしば議論になります。一般的に日本人の間でよく言われること、私の見解、現在の状況について思うところを書いていきます。

ベトナム人は拝金主義と言われてきたが・・・

「ベトナム人は目先のお金のことばかり考える。」「ちょっとでもいい給与の求人があればすぐに転職してしまう。」これは日本人の多くが考えるところかと思います。日本で実習に来ているベトナム人は日本で稼いでなんぼの世界なので、職場に対する給与の不満、少しでも多く給与がもらっている会社があれば不平不満ということもよくある話です。しかしベトナム国内のベトナム人については少し状況が変わってきています。

一般的な会社員の場合

大卒でホワイトカラーに就くベトナム人はこの10年で飛躍的に増えたと思います。毎年経済成長を続けて国民の暮らしぶりも上がっていて給与上昇も激しいので、とりあえずそれなりの会社員をやっていれば贅沢はできなくともそれなりに楽しく生きていくような給与をもらえる人も増えています。そこで考えるのがどのくらいの給与を最低ラインと定めるかについて。給与は高ければ高いほどいい、これはどこの世界でも同じかと思います。

しかし高い給与の代わりに犠牲にするものが出てきた場合はどうでしょうか。真っ先に思い浮かぶのが時間と身体の犠牲です。これまでベトナム人は収入を上げるための転職というのが普通でしたが、最近では収入が下がってでも転職を希望する人が増えてきました。理由としては「毎日の残業が多くてプライベートの時間が取れない」や「職場のストレスが耐えられない」というものです。聞くと結構な給与をもらっていますが、そこよりも大切なものが彼らの中にあることが窺えます。これは私の肌感覚ですが、現在において800~1000USDあたりが彼らにとっての給与と犠牲にするもののボーダーラインになってくるのかな、と感じています。日本で言う年収600万円ラインみたいなものかと思います。

一般的なワーカーの場合

地方を中心とした工場で働くワーカーの場合です。最近はワーカーそのものの母数が減っていますので、外資系企業が最低賃金でワーカーを大量雇用するというのが難しくなっています。しかしローカルの工場を見ていると最低賃金レベルで勤めているワーカーというのもまだまだいます。ワーカーとして働く彼らが自分の収入に十分満足しているという人は少ないでしょう。しかしこれまでと違い少しずつ考え方が変わってきているのは「安定性」についてです。たとえ給与が少なくても毎月決まった額が給与として入ってくるのを重視する人が増えてきました。ワーカー層は自営業や農家などの環境で育ってきた人も多いですが、自営業は当たれば儲かるが当たらなければ日々の暮らしも大変です。また昔と比べて現代的な店舗型の営業スタイルが広がっていますので、特別な知識やスキル、創造性のない自営業者は間違いなく儲けることはできません。そんな環境を見て育った、または元自営業者の人にとって上に書いたワーカーとしての固定の賃金というのはありがたく感じるものです。働いたら確実にお金が入ってくる。これは日ごろサラリーマンをやっていると忘れがちな部分ですが、生活に安定をもたらすうえで不可欠なものです。

これまでは絶対的な所得が少なかったので収入額に固執する人が多かったですが、この域を脱した人からお金よりも職場の環境や安定を重視する人が増えています。この傾向はこれからも続くでしょうし、安い人件費と思われがちなベトナムの終わりが始まっているようにも思えます。