肉を洗うベトナム人

もう10年近く前になりますが、料理の前準備として生肉を水でザバザバ洗うベトナム人を見て驚いたことがあります。今回はそんな肉を洗うベトナム人についての話です。

肉は洗うものなのか?

私にとって肉を洗うのは肉のうま味が取れたり、水っぽくなるから良くないという認識でした。改めて調べてみますとやっぱりそういう見解が日本では一般的で、更に肉を水洗いすると元々肉についてる細菌が水しぶきなどを介して調理器具や皿などに付着する恐れのあることから避けるべきだそうです。つまり肉は洗わない、という私の感覚は間違ってなかったと言えます。

なぜベトナム人は肉を洗うのか?

初めてその光景を見たときに、「肉ってそんなザバザバ洗うの?」と聞いたことがあります。それに対するベトナム人の反応は「えっ!?だって洗わないと汚いでしょう?」というものでした。むしろ清潔好きな日本人が洗っていないということのほうが驚きだといった反応です。これは文化、習慣の違いかとその時は思いましたが、少ししてその事情に合点がいきます。

肉が売られている環境

ベトナムで生肉を買う場合、スーパーで売られているパック詰めの肉を買うか、市場で売られている肉を買うかのどちらかが普通です。しかし市場で売られている肉の場合、ブロックで木の机に置かれている肉を測り売りしますので、その都度店主が肉を切り分けます。この時素手で肉を切る人もいればビニール手袋をして肉を切る人もいるのですが、ビニール手袋をしたままあっちこっち触ったりそれでお金の受け渡しをしたりしますので、はっきり言って清潔な状態で肉に触れているとは言えません。ビニール手袋はどちらかというと自分の手が汚れないようにするために使っているようなノリです。

(とりあえず焼いて食うから食中毒の心配はない、ということか?)

また屋外の市場や路上はご存知バイクや車が普通に行き交いますので埃やチリの付着も当然あるでしょう。日本の個人経営の肉屋のような冷蔵ケースに保存といった世界ではありませんので、肉は売られるまで外気にさらされていることになります。夏場などで腐らないのかどうか不思議なところではありますが、これについてはここでは触れないようにします。

以上のことからベトナム人が生肉を洗うのは細菌云々以前の別次元の汚れを落とすことが目的だというのが分かりました。

因みにスーパーでパック詰めで売られているものは日本と似たようなものなので、水で改めて洗う必要はないかと思われますが、ベトナム人は市場でしか肉を買えなかった時代の習慣の名残から、スーパーの肉でも変わらず洗っている人もいます。またスーパーが安全清潔を謳っていても裏ではどんな適当なことをしているか分からないと疑うベトナム人も多く、信用できないということで変わらず洗っている人もいます。

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