就職にお金を払う?ベトナム労働法改正から見られる献金問題

来年2021年1月1日からベトナム改正労働法が実施されます。外国人に直接関係のありそうな項目の改正もあるのですが、今回はそことは違う事項を取り上げます。日頃ベトナムでコンサルをやってる中でもよく質問を受ける内容ですので、その点についても解説していきます。

採用に当たって金銭の支払いを禁止に

改正労働法第11条に以下の文言が追加されるようになりました。

Người lao động không phải trả chi phí cho việc tuyển dụng lao động.

Bộ Luật Loa Động 2021

和訳は「労働者は採用に対して金銭(その他)を支払ってはいけない」となります。早い話が「お金を払うから採用してくれ!」っていうのはダメですよって決まりです。

ベトナムでは採用にお金を払う習慣がある

まず前提で知っておいてほしいのが、ベトナムでは採用にお金を払う習慣があるということです。と言っても全ての人がお金を払って就職しているのかと言われるとそうではありません。ある特定の業界、職種に関してとだけ言っておきます。日本にいる技能実習生も仕事を得るためにブローカーへお金を払っていますので、それも一つの例になります。金額は様々ですが日本円で数万~100万円を超える額など様々です。

日系企業でも採用にお金を払っているケースも

製造業のワーカーを採用するに当たって、採用する代わりにそのワーカーからお金を取っていた人事マネージャー(ベトナム人)がいるという話を聞いたことがあります。100人単位で採用をする製造業なので、そのマネージャーには随分なお金が懐に入っていた模様。現地代表の日本人より余裕で金持ちだったということですから笑えない話です。この法律では労働者がお金が払ってはいけないということですが、それによる受け取りを禁止する項目がないのは少し気になるところです。

賄賂か謝礼金か、それが大きな問題だ

これはベトナムを語る上で苦労する分野です。ベトナムでは賄賂は表面上どこでも禁止されていますが、謝礼金に対する決まり、個人的なうしろめたさの感覚、みたいなものはありません。例えば公務員などで賄賂を貰うことはもちろん禁止されていますが、謝礼金を受け取ることは問題となっていません。我々日本人の感覚からすると「同じことではないのか?」と思うかもしれませんが、法的に悪いことをしているのか、そうではないか、という観点からこの線引きは重要になります。以下に例を挙げてみましょう。

役所で何かを申請する際に、「忙しいからどれぐらい時間がかかるか分からない」と言われたとします。この時点で舐めてますが、そこでいくらかお金を包んだ結果、即行処理してくれたとしましょう。このお金は賄賂ではなく、あくまで個人として支払う謝礼金と解釈されます。つまり、

「とても忙しいにも関わらず、私のために便宜を図って手早く処理してくれたおかげで、すごく助かった。ありがと~!是非感謝の御礼に受け取ってね!!」

といった感じです(かたち上は)。なので渡す側も受け取る側も特に後ろめたい気持ちがないということになります。これを先ほどの人事に当てはめると、本来不採用にした人をお金を貰うことによって採用すれば賄賂となりアウトですが、採用した人が後から謝礼金として個人的にお金を支払うのであれば問題ないという道理が通ってしまうようです。これは日本人がベトナムに来てコンプライアンスを徹底する際、非常に厄介になってくる事柄です。

労働改正法でなぜこの項目が追加されたのか?

素直な見方をすれば昨今の採用不正などの事情を鑑みて、「採用の可否が金銭に左右されることなく、平等な評価で採用しましょう」といったことになるかと思います。しかし上でも言ったように渡す側の禁止を定めるのに対し、受け取る側の禁止がないのは少し気になるところです。今回の改正に伴い、採用の献金問題が解消されるかと言われると、私は特に従来と変わらないのではないかという立場です。

ベトナムでは人事に関わらずビジネス上での金銭の授受について頭を悩ませる日本人は多いです。ここを看過するか徹底的に排除するかはその人のスタンスに依りけりですが、日系企業はまだ比較的こういった部分がクリーンな会社が多いので、そこを好んで入社希望するベトナム人も多いです。