今更ながらxin chàoとは

ベトナム語の勉強をしたら最初に学ぶのが「xin chào」ですかね。旅行でベトナムに行ったことがあるとかベトナム人の知り合いがいるとかならベトナム語を知らなくても xin chào ぐらいは知っている人も多いかと思います。今回はこの xin chào について少し書きたいと思います。

ベトナム語の挨拶とは

巷のネット記事やちょっとしたベトナム語に関する小話で、「ベトナム人はxin chào を言わない」というフレーズを見かけます。これは日本人(外国人)が最初に学ぶフレーズなのに当のベトナム人は言わないという意外性を持たせたものかと思いますが、これは厳密には正しくなくベトナム人でも xin chào は使います。ではなぜこんな書かれ方がされるのか?少し日常を覗いてみます。

一般的な挨拶は「S+chào+O」

よく知った間柄で xin chào と言うことはありません。通常は 「S+chào+O」で、さっと挨拶する場合はSの部分は省略されるのがほとんどです。一方少し改まった相手に対してはSは省略しないほうが丁寧です。ベトナム語は人称が相対的に表されるので慣れるまで大変ですが、慣れれば相手との関係性を類推するのに便利ですので、複数の集まりなどでその人の立ち位置などを測るのに役立ちます。em chào anh / cháu chào cô / cháu chào bác などなど。Sを省略しないケースでは必然的にSはOより下の身分であることが多いです。

ベトナム人がxin chàoというケース

さきほどよく知った間柄では使わないと言いましたので、ちょっと改まった相手に対して使うことは普通にあります。例えば私の場合も同じマンションのフロアに住む住民と会ったときにそう挨拶されることがあります。これは私がその人と特に親しく付き合うような仲でもなく、年上の外国人ということで丁寧に挨拶されているということが窺えます。ここで私も挨拶をして日ごろからよく世間話などをするようになるとxin chàoと言われることもなくなるでしょう。

他にも妻の実家へ行ったときに義兄からxin chàoと言われ迎えられることがあります。身内なのでよく知った間柄になるわけですが、これはきっちり礼節をもって迎えているという姿勢が表れていると解釈できます。もちろんそれを言うかどうかはその人のキャラクターの問題ですので人に依りけりなわけで、xin chàoと言わないから礼節を欠いているということにはなりません。

外国人はxin chàoでも気にしなくてOK

冒頭のように「ベトナム人は xin chào と言わない」と聞くと戸惑うかもしれませんが、普通に旅行時やそんなに近くない人に対してはxin chào連発でも全然問題ありません。たとえ近い間柄でも xin chàoと言って失礼になることはありませんので気にしなくても大丈夫です。もし 「S+chào+O」 の形式で相手が挨拶してほしいと感じたならその時に教えてくれるでしょうし、それがきっかけで距離が近まることもあるでしょう。xin chàoと言ったら距離を取られているようでよそよそしく感じられると書いている記事もありましたが、実際のところ外国人なんだからそんな意図がないことはベトナム人はよく知っています。

そういえば「おはよう、こんにちは、こんばんは」

日本語のおはよう、こんにちは、こんばんはを訳した言葉で「 chào buổi sáng/ chào buổi trưa / chào buổi tối 」というのがあります。chàoの後ろの言葉がそれぞれ朝、昼、晩を表す言葉なんですが、これを日本語の感覚でそのまま人に使ってしまうと面食らうベトナム人も多いかと思います。というのもこれは挨拶として人に使われるものでは通常なく、私も10年近くベトナムに住んでいて人に対して言ってるのは聞いたことがありません。

聞くとしたら夜明けごろのニュースの開始時にアナウンサーが「xin chào quý vị và chào buổi sáng!」と言ってるところぐらいです。 quý vị は相手を最大に敬った敬称でxin chàoだから非常に丁寧です。その後の chào buổi sángは人に対してではなく、来るべき朝という自然に対して挨拶しているといった感じでしょうか。 どちらにしても会話で使われるようなフレーズではないと言えます。

挨拶のフレーズや人称などで相手の姿勢を時にはうかがい知れるベトナム語。慣れるまでは色々考えながら挨拶する羽目になるかもしれませんね。

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